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【2026年版】ゼロトラスト時代のVPN移行戦略|SASE・ZTNAへのステップ

· VPNナビ編集部

ビジネスのデジタル化やリモートワークの常態化に伴い、企業のセキュリティ戦略は大きな転換点を迎えています。かつて社内ネットワークと外部を安全に区切る「境界型防御」の主役だったVPNですが、2026年現在、その限界が露呈し、ゼロトラストアーキテクチャへの移行が急務となっています。

本記事では、なぜ今VPNからの脱却が必要なのか、そして次世代のセキュリティであるSASEやZTNAへどのように移行すべきかをエンジニア視点で解説します。


なぜ今、従来のVPNからゼロトラストへの移行が急務なのか

従来のVPNは、「一度社内ネットワークに入ったユーザーやデバイスは信用する」という境界型防御の思想に基づいています。しかし、クラウドサービスの普及やゼロデイ攻撃の増加により、この前提はもはや通用しなくなっています。

2026年現在、企業が直面している課題は深刻です。警察庁の発表によると、ランサムウェア被害の約7割がVPN機器の脆弱性を突いた侵入経路から発生しています。また、総務省の調査でも、標的型攻撃による情報漏洩インシデントの約60%が認証情報の窃取に起因しています。

さらに、VPNには以下のような構造的な課題があります。

  • ラテラルムーブメント(横展開)の容易さ: 一度VPNに侵入されると、社内ネットワーク全体へのアクセスを許してしまう。
  • パフォーマンスのボトルネック: すべての通信を本社やデータセンターのVPNゲートウェイを経由させるため、クラウド利用時に深刻な遅延が発生する。
  • 管理の複雑化: 多様化するデバイス(BYOD等)の管理や、退職者のアクセス権限の剥奪漏れリスク。

これらを根本から解決するのが、何も信用しない「ゼロトラスト」の概念に基づいた、ZTNA(Zero Trust Network Access)やSASE(Secure Access Service Edge)です。


VPNとZTNA・SASEの違いをエンジニア視点で比較

移行を進めるにあたり、従来のVPN、ZTNA、SASEの技術的な違いを整理しておきましょう。エンジニア視点での比較は以下の通りです。

比較項目 従来のVPN ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス) SASE(サセ)
防御の思想 境界型防御(城壁モデル) ゼロトラスト(検証してから信頼) ゼロトラスト + クラウドネイティブネットワーク
接続単位 ネットワーク単位(L2/L3) アプリケーション単位(L7) アプリケーション単位 + Web/SaaS全般
トラフィック経路 一度社内設備を経由(バックホール) 直接クラウド・アプリへ接続 グローバルなPoP(分散拠点)を経由して最適化
認証方式 ID/パスワード + 多要素認証(オプション) 常に多要素認証・デバイス状態(MDM)を検証 ユーザー、デバイス、コンテキストを常時検証
主なユースケース 社内リソースへのリモートアクセス 特定の業務アプリへの安全なアクセス 全社的なセキュリティとネットワークの統合管理

VPNが「ネットワークへの鍵」を渡すのに対し、ZTNAやSASEは「特定の部屋(アプリケーション)への個別通行証」を都度発行するイメージです。これにより、万が一アカウントが侵害されても、被害を最小限に抑えられます。


中小・大企業における安全なVPN移行の4つのステップ

急激なVPNの廃止は業務停止のリスクを伴います。計画的かつ安全にゼロトラストへ移行するための4つのステップを解説します。

  1. 現状の資産とアクセス要件の棚卸し

    • 社員がどのオンプレミスサーバーやクラウドアプリにアクセスしているかを可視化します。不要になったVPNアカウントやレガシーな接続経路はここで洗い出します。
  2. スモールスタートでのZTNA導入

    • まずは一部の部署や、リスクの高い外部パートナー、特定のクラウドアプリに対してZTNAを試験導入します。いきなり全社展開せず、トラブルシューティングのノウハウを蓄積します。
  3. ハイブリッド運用の実施とユーザー教育

    • 移行期間中はVPNとZTNAを併用します。新しい認証方法やデバイス証明書の導入に伴い、ヘルプデスクの負担が増えるため、ユーザー向けのトレーニングを徹底します。
  4. 段階的なVPNの廃止とSASEへの拡張

    • ZTNAの安定稼働を確認後、徐々にVPNゲートウェイを縮小・廃止します。最終的にはSWG(Secure Web Gateway)やCASBなどを統合したSASEアーキテクチャへと昇華させます。

社内リソースへのアクセスを一時的・簡易的に補完したい中小企業やチームにおいては、設定が容易な固定IPサービスなども過渡期の選択肢となります。詳細なツール選定については ツール一覧 → をご参照ください。


移行期によくあるトラブルとセキュリティ担保の注意点

VPNからZTNA・SASEへの移行プロセスでは、技術的・運用面でいくつかの障壁が生じることがあります。

Q: 移行期に「社内システムにアクセスできない」という問い合わせが急増するのはなぜですか? A: 従来のVPNはIPアドレスベースのアクセス制御が多かった一方、ZTNAはアプリケーションごとのFQDNやアイデンティティベースで制御するため、名前解決やルーティングの設定ミスが起きやすくなります。事前の綿密なDNSおよびFWルールの見直しが必要です。

Q: ゼロトラストを導入すれば、セキュリティ対策は完全に万全になりますか? A: 決して万全ではありません。「ゼロトラスト=安全」ではなく、厳格なポリシー設定と継続的な監視が必要です。特に、デバイスの健全性(MDMによるOSパッチの適用状況など)を確認する仕組みが欠けていると、マルウェアに感染した端末からのアクセスを許してしまうため注意してください。

Q: クラウド型セキュリティへの移行で通信速度が低下する心配はありませんか? A: 従来のVPNのように全トラフィックを本社に集約するバックホール通信がなくなるため、基本的にはクラウド利用時の速度は向上します。ただし、契約するSASEベンダーのPoP(Point of Presence)のロケーションや帯域設計によっては遅延が発生するため、トライアル期間での検証が不可欠です。


安全かつ柔軟なリモートワーク環境の構築や、自社に最適な代替アクセスの検討を進める際は、ぜひ以下の情報も参考にしてください。